スタート時刻が近づき、スタートラインには約2,000人の選手が集結し、定刻通り8時間エンデューロは8時にスタート、4時間エンデューロはその3分後にスタートしました。明け方まで降っていた雨のせいで、残念ながら路面は滑りやすいウェットコンディションでのスタートとなりました。私は4時間の先頭を走っていましたが、路面が乾き出すまでの最初の1時間ほどは、毎周回コース上で転倒されている方を見かけました。単独での転倒が多かったので、おそらくスリップでの単独転倒だと思います。特に転倒が多かったのはヘアピンとデグナーでした。このポイントは朝行っている「ロードレース講習会」でも注意ポイントとして参加者の皆さんに説明している場所です。路面が乾き出すと転倒事故は一気に減少し、レース終了後に転倒事故のデータを見ると、最初の1時間で大会中全数の半分を占めていました。この事から、路面が濡れている事でスリップしたと断言して良いかと思います。では、どの様な事に注意すれば転倒は防げるのでしょうか?濡れた路面を安全に速く曲がるのは自転車を乗りこなすテクニックと思われている方が多いかもしれません。確かに重心の移動や自転車の倒しこみ方などでカバーできる部分はありますが、それは小手先的な部分で重要なのは次の3つです。



まず、1)ですが、「スロー・イン・ファースト・アウト」という言葉を聞いた事はないでしょうか?これは車でカーブの曲がり方の基本を表した言葉なのですが、意味は「ゆっくりカーブに入って加速しながらカーブを抜ける」という意味を表しています。自転車もこれに当てはまります。カーブに入る前の直線の状態で減速を終わらせて自転車を倒し込み、カーブを抜ける時にはペダルを漕ぎ出す。一見カーブの前に沢山ブレーキを掛けて地味で遅い様に感じますがタイムを計測すると決してその様な事はありません。この走行方法が安全で早いカーブの曲がり方なのです。しかし、転倒する方はこの逆の「ファースト・イン・スロー・アウト」になっています。「速くカーブに入ってゆっくりカーブを抜ける」つまり、カーブに差し掛ってからブレーキを掛ける事でタイヤには、遠心力に逆らいながらカーブを曲がる作用と、ブレーキを掛ける事によって減速する作用が同時に掛る為、自転車が不安定な状態になります。その結果バランスを崩して失速、またはタイヤの性能の限界を超えてスリップを招きます。タイヤの性能が100とした場合、後者は【遠心力50+減速50】という状態で、ブレーキのさじ加減を少し間違えて50が60になるとスリップして転倒の原因になります。前者は【減速100→遠心力100】にした方がブレーキかハンドルかどちらかに集中できます。その結果、自転車は安定して安全に速くカーブを曲がれるという訳なので、減速してからコーナーを迎えるようにしましょう。

話は 2)に移ります。1)の途中にもタイヤの性能という言葉が出てきましたが、自転車ショップへ行くとタイヤだけでも沢山の種類がありますよね。どれを選べば良いか?タイヤメーカーさんのカタログや雑誌のインプレを見ると、転がり抵抗・耐パンク性能・グリップ力・衝撃吸収性能など、項目事に性能を数字などで表しています。今回の様にウェットコンディションの場合はスリップを防ぐ為に「グリップ力」という項目が重要になってきます。普段の練習では大丈夫でも、レースそしてサーキットと言う事から普段よりもスピードが出てタイヤには負担が掛ります。大げさかもしれませんが、自分の命を預けているものですから、良い物を選びたいですね。また、いくら良い物を選んでもタイヤは紫外線や風雨、そして時間と共に劣化していきます。古い輪ゴムを使おうとするとすぐに切れてしまいますよね。タイヤも同じでひび割れ等を起こして性能が落ちていきます。ひび割れたタイヤはグリップ力も当然低い状態になっており、スリップの原因となりますので、タイヤが擦り減っていなくても、ゴムが劣化してひび割れがあれば交換しましょう。


最後に 3)の空気圧になりますが、これはタイヤの衝撃吸収性能や選手の体重とも関係しており、一概にこの空気圧がベストと断言する事はできません。しかし、自分で探し出す事はできます。僕は基本の空気圧を8気圧にしています。どのタイヤを使う時も8気圧から乗り始めて、そこから実際走ってみた感触で空気圧の微調整を行います。自分の中の絶対的な空気圧を決めておくと、タイヤの種類を変えたりメーカーを変えたりしても、タイヤの特徴を把握しやすく、ベストの空気圧を見つけ易いと思います。
あとウェット路面の場合はドライ路面より少し低圧にします。僕はパナレーサーのタイプDを使用していますが、ドライ路面で7.5気圧、ウェット路面だと7気圧に設定しています。それは空気を入れ過ぎると細かいアスファルトの凹凸でもタイヤが跳ねてアスファルトと密着せず、十分なグリップ力が確保できないので、滑りやすい濡れたアスファルトにタイヤを密着させてグリップ力を引き出す為には、空気の入れ過ぎには要注意です。タイヤに記載してある指定空気圧内で自分にベストな空気圧を探してみましょう。大体ドライ路面では7.5〜8.5気圧、ウェット路面で6.5〜7.5気圧くらいになるかと思います。

レースを楽しむ為には安全である事が一番重要だと思います。楽しみに来たハズが怪我して台無しにならないように、参加者皆様のちょっとした心がけ、ちょっとした知識の積み重ねで安全なレースが行えるかと思います。次回レースを走る時に、今回のコラムを思い出して頂けたら幸いです 。