参加者の声
優勝インタビュー 優勝インタビュー向川尚樹の実走レポートレース前後のビールってどうなの?向川流ノンアルコールビールのすすめ
向川尚樹の実走レポート
「第8回スズカ8時間エンデューロ春SP」お疲れ様でした。楽しんでいただけましたでしょうか?大会当日は夏を思わせるような、強い日差しと共に大会がスタートしました。
レースの方は、コースのコンディションが良かったせいか、8時間・4時間共に、ラップタイムが7分台を刻む場面もあり、今までにないハイスピードでレースが展開されました。その結果、レース終盤には大きな集団は無くなり、先頭はバラバラ状態、選手同士の力勝負が見ものでした。これぞ自転車レースだなと一緒に走っていて、痛快に感じました。今回は、参加者全員が完全燃焼した大会になったかと思います。
レースを気持ち良く走り終えた後は、季節的にも「プシュッ」と冷えたビールを飲みたいですよね!また、大会前夜にも、仲間と集まって飲みたくなります。選手だと次の日に影響しないか?レース後に飲むと身体の回復がどうなるのか気になるところです。僕たちプロ選手同士でも、この話題はよくしますし、飲むか飲まないかで葛藤することが多々あります。
今回は、「ビールってどーなの?」をテーマに僕の個人的な意見を含めながらコラムを進めたいと思います。
ビールは栄養たっぷり
ビールには炭水化物・ビタミンB群・ミネラル・タンパク質などの栄養素が含まれています。なかでも注目するのは、ビタミンB群です。ドラッグストアに行くと、ビール酵母を原料にしたサプリメントがありますが、ビール酵母にはビタミンB群が豊富に含まれています。それらは、何に期待出来るかと言いますと、ビタミンB1は疲労回復に良いとされています。
「ニンニク注射」って聞いたことありますか?病院で疲労回復を目的に打つ注射なのですが、主成分はビタミンB1で、独特な匂いがすることから、ニンニク注射と呼ばれているみたいです。働きとしては、糖質をエネルギーに変えるサポートをしています。自転車競技はエネルギー消費が非常に多いスポーツなので重要な栄養素だと思います。
ビタミンB2は脂質をエネルギーに変えるサポートをします。自転車競技は長時間運動を行い続けるので、糖質だけではエネルギーを賄いきれません。効率よく摂取した脂質をエネルギーに変えることが重要なのです。
さて、次に注目すべきなのは、ビールの原料にも使われているホップです。
ホップは薬用ハーブとしても使われる事があり、リラックス効果が期待できます。レース前夜、レース後は緊張や興奮状態から抜け出せなく、寝つきが悪かったり、睡眠が浅くなったりしますよね。そういった事から解消できるかもしれません。また、利尿作用もあるので、レース後は、水分をしっかり飲んで、尿で排出することで、デトックス効果が期待されます。血液がサラサラになり身体の回復を早める効果があるようです。
そして、最後にポリフェノールです。激しい運動を行うと身体では活性酸素が作られます。活性酸素には酸化力があり、健全な細胞を傷つけ、老化の原因になるといわれています。ポリフェノールはそんな身体に悪影響を及ぼす活性酸素を取り除いてくれる働きがあると言われています。
色々書きましたが、これだけを見るとビールは最高のサプリメントだと思いますが、問題なのはアルコールです。
これは人により身体が違った反応をし、リラックスする人もいれば興奮する人もいます。寝る前に飲むと寝つきが良いと思いがちですが、実際は眠りが浅くなり、カフェインに近い影響を及ぼすと言われています。
また、誰でも起こる共通の影響としては、利尿作用と肝臓に負担を掛けてしまうということです。
まず利尿作用についてですが、上のホップでも利尿作用があると書きましたが、アルコールでも利尿作用があります。人間の身体には、尿をコントロールするホルモンがあります。このホルモンの活動をアルコールは抑制してしまいます。つまり、必要以上に身体に水分を体外に排出してしまうという事です。
レース前日は本来なら身体に水分を蓄えなければいけません。しかし、前夜に飲酒してしまうと、身体の水分は体外に排出されてしまいます。しかも飲酒のタイミングは、就寝前の場合が多いです。寝ている間に水分を摂る事はないですから、翌朝の身体は干からびた状態になっている事になります。この状態でレースを走ると脱水症状を引き起こしやすいという事が解かると思います。身体の水分が少なくなってくると、脚が攣ったりもします。よく脚が攣ったりする方は、前夜の飲酒が原因なのかもしれないですね。更にビールにはカリウムが含まれているので、他のお酒よりも利尿作用が強いので注意が必要です。
身体への負担は
次に肝臓への負担も気になります。肝臓は大きく分けると3つの仕事をしています。1. 食べた物をエネルギーに変えたり、貯蔵を行います
2. 身体に取り入れたものを解毒
3. 胆汁の生成(脂肪の消化する時に必要な消化酵素)
アルコールが身体に入ると、2の解毒の仕事をメインに肝臓は行ってしまいます。
本来レース前は、エネルギーを蓄えたり、食べ物を消化したりする事が重要なのですが、それが疎かなってしまうという事です。
アルコールは人によって、強い人・弱い人がいますが、日本人は基本的にアルコールを分解する力は弱いようです。長い間、選手をやっていて感じた事は、お酒の好きな選手は沢山いますが、レース前日に飲酒する選手はいなかったです。勿論、身体のコンディショニングの為でもありますが、レースに臨むという気の引き締めでもあるかと思います。身体が疲れていたりすると、アルコールを分解するのに時間がかかったり、悪酔いする事もあります。レースは危険と隣り合わせです。
好成績を出す為でもありますが、安全にレースを走る為にも、出来る限りベストコンディションでレースに臨んで頂きたいです。その為には、お酒好きなら物足りないかも知れませんが、ノンアルコールビールにしておきましょう。
また、レース終了後に冷たいビールをグイっと飲みたい方もここはグッと我慢です。激しい運動の後の肝機能回復のためにはアルコールは禁物。レース談義で仲間と盛り上がりたいときは美味しいビールを飲んでいるつもりで、ノンアルコールビールで楽しんでください。これなら良いとこ取りの最高のサプリメントかもしれませんね。